✅ この記事の結論
大和ハウス工業が、新築戸建住宅事業の展開エリアを大幅に見直すと発表しました。報道によると、23道県で新規受注を終了し、残るエリアでも自由設計の注文住宅は5,000万円以上に絞り込む方針です。これは「大手ハウスメーカーは、都市部の高予算層だけを相手にする」という宣言です。
一方で一条工務店は、2026年9月時点で同種の撤退発表をしていません。我が家のグランスマートは建物本体3,811万円/建て替え総額4,504万円でした。同じ「大手」でも、大和ハウスはハイコスト帯、一条工務店はミドルコスト帯の住宅メーカーで価格帯がまるで違います。
2026年9月、住宅業界にかなり大きなニュースが流れました。大和ハウス工業が戸建住宅事業を再編し、23道県から事実上の撤退。さらに残るエリアでも販売価格5,000万円以上の物件に絞るという内容です。
「5,000万円以上しかやらない」と聞くと、多くの方が「もう大和ハウスでは建てられない」と感じたはずです。一条工務店も段々と値上がりしてきて価格帯が近づいてはいるものの、未だ大和ハウスよりもコスパよく建てることができるので、「大和ハウスを検討していたけれど、一条に切り替えようか」という人がこれから確実に出てきます。
この記事では、まずニュースの中身と背景を整理し、そのうえで一条工務店で実際に建てた施主の視点から「一条はどうなのか」「乗り換えるなら何を確認すべきか」を、我が家の実額を出しながら解説します。
大和ハウスが発表した「23道県撤退」と「最低5,000万円」とは
決まったことを時系列で整理
報道と大和ハウス工業の公式リリースを合わせると、動きは次のようになります。
| 時期 | 起こること |
|---|---|
| 2026年9月末 | 対象エリアで注文住宅の新規受注を終了 |
| 2027年3月末 | 対象エリアで分譲住宅の新規受注を終了 |
| 2027年4月1日 | 戸建事業の組織再編。アフター対応は新会社「大和ハウスパートナーズ」に集約(全国47都道府県に拠点) |
注目したいのはスピード感です。発表から注文住宅の受注終了まで1か月もありません。業界関係者でさえ「いずれ縮小するとは思っていたが、思ったより早かった」という反応が出ているほどのようです。
対象になったのはどこか

対象は23道県。報道されている範囲では、北海道・東北・北陸のほぼ全域、甲信(山梨・長野)、和歌山、山陰と南四国、九州南部などが含まれ、関東・中京・関西といった都市圏は継続という構図です。要するに「人口と所得が集まっているところに人員と資本を集中させる」という判断ですね。
「5,000万円以上」は土地代を含まない建物の価格
ここを誤解している人が多いかもしれないので、念のため。報じられている5,000万円というラインは土地代を除いた建物側の価格です。
感覚をつかむために、我が家の数字と並べてみます。我が家は建て替えなので土地代はゼロですが、それでも解体・外構を含めた総額は4,504万円でした。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 我が家:建物工事費合計(税込) | 38,114,812円 |
| 我が家:建て替え総額(解体・外構等込み) | 45,036,452円 |
| 大和ハウスの新しい受注ライン(建物のみ・土地別) | 50,000,000円〜 |
つまり、我が家がグランスマートで実際に払った建物本体の約3,811万円では、新しい大和ハウスの土俵にはそもそも上がれない金額ということになります。1,200万円ほど足りません。
なぜこうなったのか|背景にある3つの構造
① 建築費の上昇スピードが、収入の伸びを追い越した
給与も少しずつは上がっていますが、建築資材と人件費の上昇はそれを大きく上回るペースで進みました。結果として「打ち合わせは良いところまで進むのに、予算が届かず契約にならない」という商談が地方ほど増えているのが実情のようです。
東京・大阪・愛知などの大都市圏は比較的に収入が高いことから契約に至る人が多い一方、地方は比較的に収入が低いことから契約に至る人が少ないということなのでしょう。それが大和ハウスのいう市場環境の違いが顕著になっていることに繋がっています。確かに経営判断からえば、営業所を維持して人を張り付けても契約率が上がらないエリアは、単純に効率が悪いので撤退したくなるのはわかる気がします。
② 大手ハウスメーカーは「1棟あたりの利益」を取らないと成立しない
大手は社員数が多く、教育もサービスも手厚い。その分、1棟あたりでしっかり利益を取らないと組織が回りません。値引きで数を追う戦い方は、もう選べないわけです。
大和ハウスが投資家向けに出している方針も一貫していて、戸建住宅は「数ではなく1棟あたりの価値向上に軸足を置き、収益性の改善を図る」という表現になっています。今回の発表は、その方針をそのまま実行に移したものと言えます。
③ 国内の新築戸建てより、賃貸・商業・海外のほうが伸びている
大和ハウスの成長を牽引しているのは、賃貸住宅・商業施設・事業施設、そして海外事業です。特に米国の戸建事業は好調で、海外事業の売上は1兆円規模に達しています。加えて、リフォームや中古住宅といった「ストック事業」の市場は拡大中です。人口減少で新設住宅着工戸数が長期的に減っていく国内新築戸建てに、限られた経営資源を張り続ける理由はない——という、経営としては極めて合理的な判断です。
では一条工務店はどうなのか|価格・エリア・撤退リスクを検証

同じ「大手ハウスメーカー」でも、一条工務店の立ち位置はかなり違います。
価格:我が家のグランスマートは建物3,811万円・坪単価約72万円
我が家の実額を改めて出します。オプション44項目を積んだうえでの数字です。
| 項目 | 金額・数値 |
|---|---|
| 商品 | グランスマート(2×6枠組壁工法) |
| 建物工事費合計(税込) | 38,114,812円 |
| 坪単価(建物本体) | 約72万円/坪 |
| 坪単価(総額ベース) | 約100万円/坪 |
| オプション合計(44項目) | 2,436,910円 |
| 太陽光発電+蓄電池(13.475kW) | 2,485,000円 |
| 親族割(1.5%)値引き | 422,905円 |
一条工務店は「決して安いメーカーではない」とよく言われますし、我が家もそう思います。ただ、大和ハウスが新しく引いた5,000万円のラインから見ると、明確に下の価格帯にいます。太陽光13.475kWと蓄電池まで載せて建物3,811万円というのは、いまの相場では十分に戦える数字です。一条工務店のグランスマートは、一条工務店のなかでは最高グレードですので、大和ハウスから乗り換えた場合はほぼ確実に安くなるでしょう。
詳しい内訳はグランスマートの坪単価と総額を全公開した記事にまとめています。
エリア:一条工務店は2026年9月時点で撤退の発表なし
この記事を書いている2026年9月時点で、一条工務店から今回のような大規模なエリア撤退・価格下限設定の発表は出ていません。
背景として、一条工務店は自社グループの工場で建材・設備をつくり、自社施工比率を高めることでコストを抑えるモデルを採っています。「標準仕様を厚くして、そのぶん大量につくる」という戦い方なので、大和ハウスのように1棟の単価を上げる方向に舵を切る必然性が、いまのところ薄いのです。
また、大和ハウスと比べて、新築一戸建ての着工数が多く、力を入れている分野であることもあり、一部の都道府県であっても撤退の可能性は極めて低いと感じます。
とはいえ「撤退リスクゼロ」ではない
💡 ヒント
今回の件でいちばん学ぶべきなのは「大手だから一生安心」という前提が崩れたことです。一条工務店を含め、どのメーカーで建てるにしても、引き渡し後のアフター窓口がどこになるのかを契約前に文書で確認しておく価値が上がりました。
大和ハウスもアフターは全国47都道府県に拠点を持つ新会社が引き継ぐと発表しています。ただ、家のトラブルというのは「契約時の担当営業に相談して話をまとめる」ことで解決してきた面が大きいです。営業拠点がなくなると、リフォーム会社側と直接やり取りすることになり、「私たちが打ち合わせしたわけではないので」となりがちです。これは実際、過去に地方から撤退した他の大手でもよくあった話です。
我が家も大手を選んだのはアフターを含むサービスの確実さの面がありました。また、大和ハウスも検討する機会がありましたが、大和ハウスの新築一戸建ての着工数が急減していたなかでしたので、今後の先行きに不安を覚えたこともあり、候補から外れました。一条工務店は、新設住宅着工戸数は長期的な減少傾向にあるなかでも、十分な着工数どころか、最高の着工数を確保しているので今後の先行きの不安は少なかったです。
一条工務店の保証・アフターの仕組みについては一条工務店の保証内容を整理した記事で解説しています。
大和ハウスから一条工務店に乗り換えるなら、確認したい4つのこと
① 同じ金額でも「どこまで入っているか」がまったく違う
一条工務店の最大の特徴は標準仕様の厚さです。全館床暖房、樹脂サッシ+トリプルガラス、熱交換換気(ロスガード)、断熱材まで含めて標準に入っています。他社では数百万円のオプションになる項目が、最初から見積もりに入っている形です。
ですから、他社の見積もりと比べるときは金額だけを並べても意味がありません。同じ断熱性能・同じ設備にそろえたときいくらになるか、で比べてください。
といっても、多くの場合、一条工務店の標準仕様は質が高いわりに価格が安いことから、同性能のものを選んでも自然と価格は安くなるでしょう。
② 契約後の追加費用が読みやすい
建築費が上がり続ける局面でいちばん怖いのが、契約前に安く見せて、契約後に追加費用を積み上げるやり方です。業界全体が1棟あたりの利益を取りに行く流れなので、このリスクは今後さらに高まります。
その点、一条工務店は標準仕様の範囲が広く、オプションも価格表がかなり明確です。我が家もオプション44項目で2,436,910円となり、終盤の見積もりからのずれがほとんどなかったです。我が家のオプション全44項目と金額を公開した記事も参考にしてください。
③ 間取りの自由度は、大手他社より制約が多い
一条工務店には「一条ルール」と呼ばれる構造上の制約があり、大和ハウスのような鉄骨系メーカーに比べると大空間や大きな窓、変則的な間取りは苦手です。アイスマートなど、そもそも総二階でないとできない仕様もあります(平屋は除く)。
「性能とコストのバランスを取りたい」なら一条は強い選択肢ですが、「間取りの自由度が最優先」だった人にとっては、乗り換え先として物足りなく感じる可能性があります。正直なところ、デザイン性は大和ハウスに負けていてもおかしくないと思いますが、一条工務店もデザイン性を高めているところですし、一条工務店の家が格好悪いと感じたことはないので気になるかはその人次第だと思います。詳しくは一条ルールを解説した記事にまとめました。
④ 紹介制度で数十万円が動く
乗り換えを検討するなら、展示場に行く前にここを押さえておいてください。一条工務店には紹介制度があります。展示場に行ってからだと適用することができないので注意してください。
我が家は紹介制度を利用する前に展示場に行ってしまったので一時的に後悔したものの、親族割(1.5%)は展示場に行った後でも使うことができたので親族割で422,905円の値引きになって救われました。
⚠️ ポイント
紹介制度は展示場に行って個人情報を書いた後では使えなくなるケースがあります。他社から乗り換える方ほど「まず展示場へ」と動きがちなので、順番には注意してください。
これから家を建てる人が、いまやるべきこと
「待てば安くなる」はもう期待しにくい
建材メーカーからの値上げ通知は今も続いており、2026年秋以降にもう一段の上昇が見込まれています。ウッドショック以降、建築費は落ち着くどころかじりじり上がり続けているのが実情です。
焦って契約する必要はまったくありません。ただ「のんびり情報収集していたら、いつのまにか予算が届かなくなっていた」というのは、いま現実に起きています。勉強は早く、判断は慎重に——このバランスが大事です。
契約前に必ずチェックする3点
- 標準仕様書:どこまでが標準で、どこからがオプションなのか
- オプション価格表:追加したい設備の金額が事前に見えるか
- 諸費用まで入れた資金計画書:建物価格ではなく「総額」で判断する
我が家も建物3,811万円に対して総額は4,504万円。700万円近い差が、解体・外構・諸費用として乗っています。建物価格だけを見て資金計画を立てると、ここで確実に破綻します。
最低でも2〜3社は同じ条件で見積もりを取る
大手の選択肢が減っていくということは、裏を返せば比較の重要性が上がるということです。我が家も最終的に一条工務店・アイ工務店・ヤマト住建の3社まで絞り込んで比較しました。相見積もりを取らずに1社で決めるのは、いまの相場ではかなりリスクが高いです。
まとめ|大手の選択肢が減る
今回のニュースを施主目線で整理すると、こうなります。
- 大和ハウスは23道県で新築戸建てから撤退し、残るエリアも建物5,000万円以上に限定する
- 注文住宅の新規受注終了は2026年9月末と非常に早い
- 背景は「建築費の上昇>収入の伸び」という構造で、他社にも波及しうる
- 一条工務店は現時点で撤退エリアの発表はない
- 我が家の実額は建物3,811万円・総額4,504万円よりも下。一条工務店の最高グレードのグランスマートであっても大和ハウスで建てるよりも安くなりやすい。
- 乗り換えを考えるなら「標準仕様の中身」「間取りの自由度」「紹介制度の順番」の3点を先に押さえる
大手の選択肢が減っていくのは、検討者にとっては間違いなく逆風ですが、これから動く方は、まず相場観をつかむところから始めてみてください。


